2024年12月20日公開
第7回 ユーザの立場から見たEU AI法を含むグローバルAI規制の最新動向
Ⅰ EU AI法の概要
1 2026年8月から全面適用されるEUAI法
EU AI方は、ベンダ及びユーザ双方によって注目されている。本稿では、ユーザの立場からどのような点に留意すべきかを説明したい。
筆者は、本年3月にAI法に関する論考1を公表した。この時はいわゆる「ほぼ最終バージョン」のドラフトが公表され、それに基づく考察を行ったものであった。
その後、2024年7月12日にEU AI法が公布された。その20日後である同年8月1日に施行されるが、実際には、その24ヶ月後の2026年から全面的に適用を開始する。ただし、提供が禁止されるAIシステムに関する規定などは施行から6カ月後の2025年2月に、生成型AIに関する規定などは施行から12カ月後の同年8月に適用を開始する2。
このEU AI法のテキストは以下のリンクをご覧になられたい3。
なお、かつて、2021年段階の草案(当時は「AI規則案」と呼ばれていた)が広く人口に膾炙し、総務省のHPで和訳も公表されている4。この時点のものと現在のものとを比較すると、ChatGPT等の生成AIの発展を踏まえ、相当程度変更されているので、当時のものを確認してそれでよしとするのではなく、最終的に公布されたものを読むべきである。
1)松尾剛行「成立間近のEU『AI法』で留意すべきAI利用者への影響-政策パッケージの動向を国内金融機関として注視すべし-」金融財政事情2024年3月5日号(https://kinzai-online.jp/node/11354)
2)https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/05/4a706cd3034c4706.html
3)https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1689/oj
4)https://www.soumu.go.jp/main_content/000826706.pdf
2 リスクベースアプローチ
この点は、既に多くの方がご存知だと思われるが、EU AI法はリスクベースアプローチを採用している。そこで、それぞれのAIの類型に応じて、最もリスクが高いAIは禁止類型とされ、その利用等が禁止される。また、ハイリスクについてはAIは重い義務を負う。 さらに、限定的リスクのAIについては、透明性に関する義務を負うに留まる。 最後に、最小リスクのAIには法的規制は適用されず、行動規範の遵守が期待されるに留まる。

【European Commission”AI Act”より引用5】
5)https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/regulatory-framework-ai
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<筆者プロフィール>
松尾剛行(まつお・たかゆき)
桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー弁護士(第一東京弁護士会)・ニューヨーク州弁護士、法学博士、学習院大学特別客員教授、慶應義塾大学特任准教授、AIリーガルテック協会(旧AI・契約レビューテクノロジー協会)代表理事。