2024年06月28日公開
第1回 ブレインテック
Ⅰ ブレインテックの現状
ブレインテックと呼ばれる、脳情報を含む脳神経科学に関する情報の高度な利用に関する技術が進展している。各国も国家プロジェクトとしてブレインテックに関する研究を行っており、米国のThe Brain Research Through Advancing Innovative Neurotechnologies(通称ブレイン・イニシアチブ1)や、日本のムーンショット型研究開発事業2はその代表例である3。
最近の国際動向として、ブレインテックの一種である、脳とコンピューターをつなぐインターフェイス(BCI、Brain-Computer Interface)を開発しているイーロン・マスク氏率いるブレインテック企業Neuralinkは、2024年3月20日に、公式Xアカウントで、治験として行われたBCI埋め込み手術の最初の患者へのインタビュー動画を公開した。その中では、BCIを埋め込まれた治験者が、車椅子に座ってノートPCの画面に向かって「脳で」操作をしてゲームをプレイする映像等が含まれている4。将来的には、多くのコミュニケーションがブレインテックを利用して行われるようになると予測される。
1) National Institutes of Health, The Brain Research Through Advancing Innovative Neurotechnologies® (BRAIN) Initiative Revolutionizing our understanding of the human brain, available at https://braininitiative.nih.gov/.
2) 国立研究開発法人科学技術振興機構「ムーンショット型研究開発事業」〈https://www.jst.go.jp/moonshot/index.html〉。そのうちの主に目標1の「2050 年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」が関係する。
3)なお、筆者はかかるムーンショット型研究開発事業のうちのInternet of Brains Society 研究会(IoB-S研究会)において研究参加者を務めた。〈https://www.iob-s.com/〉同チームは、2022年から2024年まで、注11記載のものを含む「Law of IoB-インターネット・オブ・ブレインズの法」連載(以下「IoB連載」という。)を継続し、また、IoB-S研究会実装実験系課題検討タスクフォース「IoB-S研究会実装実験系中間報告書脳神経科学技術(ブレインテック)の法的課題-神経法学(Neurolaw)の構築に向けて」を2024年に公刊した。
4) 佐藤由紀子=ITmedia「イーロン・マスク氏のNeuralink、初治験者の動画公開『私の人生を変えてくれた』」 ITmediaNEWS(2024年03月21 日)〈https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2403/21/news102.html〉
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<筆者プロフィール>
松尾剛行(まつお・たかゆき)
桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー弁護士(第一東京弁護士会)・ニューヨーク州弁護士、法学博士、学習院大学特別客員教授、慶應義塾大学特任准教授、AI・契約レビューテクノロジー協会代表理事。